異動と家族の介護



会社においては異動の一環として転勤を命じることがあります。

この場合において労働者がたとえば親などの介護をしなければいけないという場合に転勤を拒否できるのかといったことが問題となることもあります。

会社によっては介護を理由に転勤拒否の隠れ蓑としているような労働者もいるわけですが、どこまでが転勤を命じることができる場合なのかについては判断がとても難しいです。

今回は判例や法律などを中心に転勤を拒否できる介護の状況について整理しておきたいと思います。

介護では転勤は命じられないとする根拠



これについては育児介護休業法第26条の存在があります。


事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。



これについて介護だけではなく、子の育児にも配慮が必要となっていることがわかります。

内容としては義務規定なので家族の介護をしている場合には絶対に転勤させてはいけないかのような印象も受けます。

就業の場所の変更という記載があることからも、勤務地変更を伴った移動についてのみの規制と考えて良いと思います。

勤務地が今までと同様で、担当が変わったりすることがこの条文に規制には当たらないとなります。

さて問題はこの条文についてどのように介護をしている場合に転勤をさせてはいけないのかということを判断するのかということです。

日本電気事件



これについて判例で有名なものがあります。


昭43.8.31 日本電気事件 東京地裁

「経済的に困窮を来すばかりでなく、家族の生活が危機に瀕する」といった程度の条件が必要



とされています。

つまり簡単にいえば単に家族を介護していてというような場合には会社の転勤命令を拒否することはできないということです。

この点、労働者にとってはかなり厳しい判断といえます。

具体的にいえば


  • 労働者以外に他の家族が介護を担当できないのか?
  • 外部の訪問介護サービスなどの利用ができないのか?



といった点が転勤命令の有効性の判断となるということです。

たとえば労働者の場合、朝から夜までは不在なわけです。

帰宅後も介護に従事するかもしれませんが、日中は労働者以外の家族が介護を担当しているとなります。

このようなケースではたしかに転勤となれば厳しい状況にはなりますが、別の家族も介護を担当できるというような判断となって転勤は有効となることが多いということになります。

そのため労働者以外の全員の家族が介護を必要とするといったような場合にしか「家族の生活が危機に瀕する」というように認定されずに有効とはならないというようにある程度は解釈しても良いのかもしれません。

転勤を命じられた労働者としては、上記のように家族に担当してもらうこと、外部サービスの利用や介護休暇の利用で調整していく必要があります。

特に介護休暇は(内容については以下のページを参照)会社に申請をして取得できるようにしていきましょう。

介護休業93日のカウント方法について

判例の判断としては上記のように厳しい内容といってはいますが、介護休暇は労働者の権利としてあるわけですから配慮という意味でも申請し取得をさせるということはある意味で企業の当然の義務といって良いでしょう。