異動で給与が下がる

 

会社によっては部署ごとに給与体系が違ったり、また支給しているような手当の内容や金額が違ってくるということがあります。

このような場合には異動で部署が変わることで給与額そのものが減ってしまうということはあります。

労働者からすれば異動自体も納得できないことも多いでしょうし、さらに給与が下がる異動には承服できないといって良いでしょう。

このような場合にどこまでの異動が違法となるのかについてまとめておきます。

 

会社の人事権と不利益変更の禁止

 

会社においてはもともと異動する権利というものがあるとされています。

つまり

 

  • 不当な目的がある異動
  • 業務上必要性のない異動

 

以外は基本的に自由といえます。

職種限定の労働契約となっている場合にはまた話は違ってきますが、通常は正社員についての異動は自由といえます。

嫌がらせや、退職勧奨を目的とした異動もありえますが、このようなもの以外での異動は構わないということです。

しかし一方で労働条件の不利益変更は違法となっています。

たとえば給与の減額がそれに該当するわけですが、これは判例上確立した法的論理です。

人事異動は自由ということと、不利益変更は禁止されているということで双方の理論は矛盾しているわけですが、これは最終的にどう判断するべきかという問題となります。

就業規則による不利益変更のポイント

手当のカットは不利益変更となるか?

 

減給を伴う異動を拒否することも可能

 

結論からいいますと給与が下がるような異動を拒否できる場合もあるというのが裁判判例の立場となっています。

有名な判例としては以下のものがあります。

 

昭34.3.14 和歌山パイル織物事件 和歌山地裁

労働者の日常生活に影響を及ぼす賃金の相当な減収、もしくは特に技術者においては、その経歴に照らして、将来にわたる技術的な能力、経歴の維持ないし発展を著しく阻害する恐れのあるような職種ないし職場の転換は、当該労働者の同意が必要である。

 

これを見れば一定の技術職の場合には異動することについて会社には制限があることがわかります。

また一技術職以外でも、給与の相当な減収を伴うような異動は違法となります。

この点、職種にかかわらずに給与の減少をともなうような異動については慎重にしなければいけないとなります。

この「相当な減収」というのがどの程度を指すのかは微妙で明確な基準というのはないように思いますが、これもその労働者の生活からも影響を受けるといえます。

たとえば

 

  • 家族構成
  • 住宅費用

 

など生活上の経費なども関係してくるといえるのではないでしょうか?

企業からすれば異動が無効と言われることは一定のリスクですので、特に減収を伴う異動の場合には個別合意を取得しておくことが必要でしょう。

これについて一番採用しやすいのは入社時の誓約書に異動についての規定を入れておいて、印鑑や署名によって同意とするという方式です。

異動の話が出てきた段階で、あらためて誓約書や同意書に同意を求めても良いのですがそのときにはすでに警戒もされていて簡単に同意を取得できないこともあります。