懲戒解雇と退職金

 

多くの会社では、懲戒解雇の場合は、退職金を支給しない又は一部を不支給とする規定を就業規則等で規定していると思います。

 

常に退職金を不支給・減額ができるとは限らない

 

上記のように規定していても、懲戒解雇イコール退職金の不支給・減額ができるとは限りません。

判例では、「長期間の勤続の功を抹消してしまうほどの信義に反する行為があった」場合しか退職金の不支給・減額はできないとされています。

 

懲戒解雇と退職金の判例

 

名古屋地判 昭47.4.28 橋元運輸事件

「退職金の全額を失わせるに足りる懲戒解雇の事由とは、永年の勤続の功を抹消してしまうほどの不信があったことを要し、労基法20条但書の即時解雇の事由よりもさらに厳格に解すべきである・・・

二重就職で懲戒解雇された従業員の退職金については6割を超えて没収することは許されない」

 

札幌地判 平20.5.19 JTB事件

「出張費22万余りの着服での懲戒解雇は、勤続35年の功労を消し去るほどの背信行為ではない。

として、退職金の3割に当たる約540万の支払いを認めた。」

 

東京高裁 平15.12.11 小田急電鉄事件

鉄道会社の社員が、電車内の痴漢行為の再犯で起訴され、懲役4ヶ月(執行猶予3年)の有罪判決を受け懲戒解雇となり、退職金を不支給とされた事案につき、退職金の不支給は「労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要であり」職務外の非違行為である場合は、相当強度の背信性が必要としたうえで、本件痴漢行為は「相当の不信行為」であるとし、退職金の3割である約276万を支給すべきとした。

 

判例に見る懲戒解雇での退職金の傾向

 

上記等を見ればわかりますように、懲戒解雇といってもほとんどの場合、退職金の全額没収は認められていないといえます。

多くの場合は、減額までとなります。

そのため、実務では、退職金の不支給はほぼできないと覚えておくことで十分です。

上記のような裁判判例をもとに、あとは事件の内容等を比較して、減額割合を算定するということになります。

 

退職届を早く提出してくる場合

 

懲戒解雇を予想した従業員が、解雇となる前に退職届を出してくることがあります。

この場合、退職届を拒否することは原則できません。

しかし、退職を確定して、退職金の全額支給を会社に義務付けることはできません。

退職届は受理しても、減額割合は別の話として会社として検討・通知します。