競業避止義務と退職金

 

退職した後に

「競業避止義務を労働者に課す」

ということがあります。

簡単にいえば

 

  • 同業他社への一定地域・期間の就職の禁止
  • 同業種での開業の一定地域・期間での禁止

 

といった内容です。

これに違反されるといったことはよくあることですが、退職金のある会社の場合、競業避止義務に違反した場合には

 

  • 退職金の不支給
  • または一部不支給

 

といった運用となっていることも多いです。

今回は裁判判例を中心にこのような競業避止義務違反と退職金の支給について紹介していきます。

 

退職金を全額不支給とするのは違法

 

まず結論的にいえるのは

「退職金を全額不支給にすることは違法となる」

ということです。

従って、全額ではなく一部不支給とした運用にしなければいけないということがいえます。

 

中部日本広告社事件 平2.8.31 名古屋高裁

(退職金を全額不支給にするのは)単に競業避止義務違反のみでは足りず,退職従業員に,労働の対償を失わせることが相当であるほどの顕著な背信性がある場合に限られる

 

競業避止義務違反と退職金の一部不支給の判例

 

上記のように

「全額不支給は違法となる確率がかなり高い」

となり、一部不支給とすることが相当です。

しかし競業避止規定の内容によってはそれでも違法と判断されているケースもあります。

違法とならずに一部不支給とするには

 

競業禁止の地域の限定

  • 例えば在職時に担当していた地域とその隣接県に限定するなど

 

競業禁止の期間の限定

  • できるだけ退職後2年間といったような期間を限定して設定すること

 

という規定にすることが必須といえます。

逆にこの地域と期間の限定のない競業避止規定はかなり違法と判断されやすく、したがって退職金の不支給や減額支給、または返還請求の判断では会社に不利となってくるといえます。

会社を退職して後は憲法の職業選択の自由との競合もあり、無制限に認められることはまずないと考えます。

退職金については訴訟沙汰ともなりやすい案件であるので、会社に都合の良いいい加減な競業避止規定で契約締結しても後から訴訟等でくつがえることも多いです。

慎重に判例に沿った規定を締結するようにしなければいけません。