契約社員と8割
契約社員は通常正社員とは待遇が異なるようになりますが、給与の金額で
「正社員の8割以上の保障をしなければいけない」
と聞いている人もいるかもしれません。
半分は正しく、半分は間違いですが、8割保障の義務があるとされる可能性がある契約社員の条件について今回は解説をします。
契約社員の8割の法的根拠
結論からいいますとこの8割の話は法律と判例にあるとなります。
法律といえばパート労働法第8条と深い関係にあるといえます。
パート労働法8条
事業主は、職務の内容、退職までの長期的な人材活用の仕組みや運用などが通常の労働者と同一のパートタイム労働者であって、期間の定めのない労働契約を締結している者については、パートタイム労働者であることを理由として、その待遇について、差別的取扱いをしてはならない。 |
平8.3.15 長野地裁上田支部 丸子警報器事件
正社員と勤務年数・労働内容・労働時間が変わらない疑似パートでは、賃金が同じ勤務年数の正社員の8割以下となることは違法 |
この判例が有名ですが、疑似パートでは正社員の8割以下となることが違法と判断していることがわかります。
ちなみに契約社員というのは法的概念でなく、その企業が勝手に名称をつけているだけで、法律上はパートタイマーとなります。
アルバイト、嘱託、準社員などと同様にパートタイマーと位置づけになりますので、上記の判例の疑似パートに該当すれば8割ルールが適用ともなりえるということです。
正社員の8割が適用される契約社員の条件とは?
上記の判例もよく読みますと
- 勤務日数
- 労働内容
- 労働時間
が正社員と変わらないという条件のただし書きがあることがわかります。
要するに労働時間や仕事内容、責任などで実態として正社員と同等の内容である場合に限って8割ルールが適用されえるということです。
逆にいえばこれらがちゃんと正社員と差別化されていれば8割ルールの適用もないとなります。
- 試用期間のあるなし
- 人事異動のあるなし
- 労働時間の長さ
- 残業・休日労働のあるなし
- 懲戒処分のあるなし
たとえばこれらの労働条件を正社員と差をつけることが考えられます。
契約社員の給与にもよりますが、正社員との給与の差を考えて契約社員には
- 試用期間を短くする
- 人事異動がない
- 残業は基本的にさせない
などといったようなところがベターではないかと思います。
企業によってはこれら一切をほとんど正社員と同様に就業規則に規定していて、かつ運用もしているという場合が非常に多いです。
漫然と給与も低い契約社員にこれら責任や義務を負わせることはどう同一労働同一賃金の議論が起こる可能性もあるということは意識しておく必要があると思います。
契約社員の8割賃金を適用させる方法
ただ実際に8割との差額を請求することは簡単ではありません。
その方法としては
- 企業と交渉する
- 労働審判をする
- 訴訟する
というような方法となります。
最も無難な方法は企業と交渉することで、たとえば契約更新時に給与交渉の一環でうまく話し合いをすることです。
しかし企業が納得しなければ8割賃金の適用もありませんし、またダメな場合には代わりに仕事上の責任のほうを減らしてもらうというようなことを目指す必要もあります。
審判や訴訟となれば当然退職を覚悟していかなければいけませんし、どの程度その手間や費用をかけてまでするべきかは難しいところです。
ちなみにこの種の賃金などは民事問題なので労働基準監督署では管轄外となります。
訴訟をするくらいならさっさと次の労務管理のしっかりとした企業に正社員で入社したほうが早いような気もしますが、最後の手段として考えるべきかと思います。
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