企業にとっては毎月の給与明細の発行と渡すという行為は作業上の負担を伴います。

人事をしている人にも面倒な作業となりますが、最近の企業ではこの給与明細について電子化が導入されつつあります。

法律上は給与明細を電子化するのは違法ではないのかということがまず問題となってきますが、今回は法的に給与明細の電子化についての導入手続きについて解説したいと思います。

 

労働基準法と給与明細の発行

 

意外と知られていませんが、労働基準法では給与明細については定めがありません。

 

  • 賃金台帳(第108条)
  • 労働者名簿(107条)

 

についての定めはありますが、給与明細の規定がないことがわかります。

つまり給与明細の電子化について労働基準法的に違法となることはまずないということです。

 

社会保険と給与明細の発行

 

社会保険の毎月の給与などからの控除として

 

  • 雇用保険
  • 健康保険
  • 厚生年金

 

などがありますが、これについて控除についての計算書の作成と通知義務があるとされています。

 

(保険料の源泉控除)

健康保険法第167条

3項 事業主は、前2項の規定によって保険料を控除したときは、保険料の控除に関する計算書を作成し、その控除額を被保険者に通知しなければならない。

 

このような規定から一般に給与明細を発行しなければいけないという義務が企業にあるという根拠とされています。

ただこの規定を見てもわかりますように控除に関する計算書については紙でないといけないというようにはなっていないので、電子化は違法とまではいえません。

というのも電子化でも控除額などが通知できればこの規定の条件を満たすことになりえるからです。

 

所得税と給与明細の電子化

 

最後に給与から控除するものとして所得税があり、所得税法にも対応しなければいけません。

所得税法第266条には

 

  • 給与支払い明細書を交付する義務がある
  • 従業員が同意すれば電子情報での交付も可能
  • ただし従業員から請求されれば書類での交付義務がある

 

となっています。

 

給与明細の電子化導入の注意点

 

給与明細の電子化では上の法律すべての規定に適用するようにしなければいけません。

そのため

 

  • 給与明細の電子化を導入する
  • メールなど電子化による給与明細を送信する手段を確立し、労働者に説明する
  • 給与明細の電子化についての同意書を取得していく
  • 個別に書類での給与明細を必要とする人には個別対応する

 

というようにしていかなければいけません。

 

給与明細の電子化とシステム上で同意を取る方法

 

電子化については給与ソフトなどシステムでは優れたものもあります。

システム上である種自動的に同意を取るようなものもあります。

たとえば

 

  • 給与明細の画面にログインするときに同意ボタンを押すようになっている
  • 個別に給与明細の電子化に同意ボタンを押すようなシステムがある

 

など個別に同意を取るよりも省力化できるようにもなっているものもあります。

 

給与明細の電子化は実はデメリットばかり?

 

電子化といえば聞こえは良いのですが、運用上意外とデメリットもあります。

経費が以前よりもかかるようになったという企業もあります。

 

  • 電子化の管理コストが余計にかかるようになった
  • 労働者が自分の給与明細を印刷して持って帰るのでペーパーレス化には結局ならない
  • 情報の流出リスクが増えた

 

給与明細の印刷については労働者の自宅のプリンターで印刷する指示を出す企業もあるようですが、このあたりは企業と労働者との話し合いになります。

 

どうしても給与明細の電子化に納得できない?どうすれば良い?

 

意外と給与明細の電子化に納得できない人もいるようです。

しかし上の所得税法の内容のように、一旦電子化に同意をしてもその後書類での通知を請求する権利はあります。

簡単に書類での給与明細を発行してくれない企業もあるかと思いますが、法律的には後からやはり紙で給与明細が欲しいというような要望も違法ではないというように考えて構いません。