通常まともな企業であれば入社時、あるいは雇用契約の変更時にはその都度雇用契約書を締結するものです。

ただ最近正社員であって雇用契約書がないというような企業で悩む人からいくつか質問を受けたので今回はまとめて解説したいと思います。

 

正社員は雇用契約書がなくても就業規則の閲覧ができる?

 

質問の中でも多いのが

 

  • 正社員には雇用契約書がない
  • その代わりに就業規則があるのでそれを閲覧すれば良い

 

というような企業も多いようです。

人事の人でもそれが当然というような意見の持ち主もいるようですが、法律的には誤りです。

労働基準法第15条では労働条件の明示という条文があります。

 

労働基準法第15条(労働条件の明示)

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。

 

具体的に明示しなければいけないこととしては

 

  • 労働契約の期間
  • 就業の場所、従事するべき業務
  • 始業終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を2組以上に分けて就業させる就業時転換
  • 賃金
  • 退職に関する事項

 

などがあります。

たしかにこの絶対的明示事項について書面の交付により明示しなければいけないとされてはいて、さらに行政通達において以下のようにいわれています。

 

平成11.1.29 基発45号

書面の様式は自由である。

なお当該労働者に適用される部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えない。

 

この行政通達によって就業規則をコピーしたものを渡せば雇用契約書なしで問題ないと考える人もいるようですが、そうではありません。

就業規則では包括的な労働条件を規定しているだけで、個別の労働条件が記載されていることはまずありません。

 

  • その人のつく職種
  • 賃金の金額
  • 支給される手当の種類

 

他にも就業場所や職種が複数ある企業であれば、それぞれ就業時刻が違うということもあるでしょう。

現実的にこれらをすべて就業規則で規定できないですし、またその点で就業規則をただコピーして渡せば労働基準法第15条をクリアできていると考えるのはやはりおかしいといえると思います。

 

雇用契約書のない正社員と突然の減給

 

雇用契約書がないというときに最も問題となりやすいのが賃金ではないかと思います。

 

  • 就業規則の提示があった
  • しかし賃金については個別に口頭で説明しただけ
  • 具体的な賃金額の証拠資料も何もない

 

というような状況となりやすいので、数年して突然減給があっても反論の証拠もないといったようになりがちです。

毎月の給与明細はあるので一応証拠がまったくないともいえないわけですが、訴訟をしたりするわけでもなければトラブル解決を労働者側からすれば多少やりにくくなることも出てくるかもしれません。

 

雇用契約書がない正社員と退職の手続き

 

あとは退職の通知と、その後の実際の退職時期というのもよくトラブルになる箇所といえます。

就業規則に退職手続きの明記があるといってもそもそも雇用契約書もないような企業ではその規定自体が違法的といったことも多いのが実際のところです。

たとえば退職の申し出は3ヶ月前にすることとするというようなやけに長い期間退職までに拘束されるというようなことも多いですし、難しいところです。

この場合は14日前の退職の通知をするというような民法の辞職規定を根拠に強引に退職するというような方法もありますが、企業とトラブルになることが多いのも実際のところです。

 

合意退職と辞職

 

正社員で雇用契約書もない!長く勤務しないほうが良い?

 

法律的な話をすれば上のようになりますが、常識的に考えれば雇用契約書もないような企業はまともな企業とは思えません。

もし自分が入社をするのであれば、辞退するかと思います。

それだけ雇用契約書というのは重要な書類ということですが、

 

  • 迷っていれば入社はしない
  • すでに在籍していれば機会を見て転職する

 

というように考えていっても良いかもしれません。

またすでにおかしな社内ルールがあって困っているようなときにも長く勤務するような企業ではないというように考えるのも間違いではないかもしれません。

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