退職前の有給休暇消化

 

退職前に労働者が残った有給休暇を取得してくるということがあります。

退職の際には、多くの会社では1月前に退職の申し出をするようにしているかと思いますが、最高で有給休暇は40日取得している労働者がいるため、取得できない有給休暇が出てしまいます。

このような場合、会社としては2つの対応方法があると思います。

 

  • 有給休暇を買い取る
  • 退職日まで可能な限り有給休暇を取得させ、残りは権利を捨ててもらう

 

労働基準法での有給休暇の買取り

 

労働基準法においては有給休暇の買取りの定めというものはありません。

在籍中の疲労回復を目的にした制度であって、買取りなど金銭への換金を目的にしたものではないからです。

ただし厚生労働省(コンメンタール等で判断を掲載している)も(調べましたら通達ということでこの判断については明示されていないようです)、退職時に未消化の有給休暇が残ったときにそれを買取りすることは違法ではないとしているのみです。

 

有給休暇の買い取り

 

下記のように原則有給休暇の買取は禁止されています。

 

昭30.11.30 基収4718号

年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づき年次有給休暇の日数を減じ、又は請求された日数を与えないことは、労働基準法第39条違反である。

 

しかし、退職時に消滅する有給休暇の買取を行うことは違法ではないとされています。

また、買取は、会社の義務ではありません。

ですので、買取を労働者から持ちかけられても応じる義務まではありません。

 

買取りの判例

 

有給休暇の買取りが裁判で争いになった例はそこまで多くはありません。

 

聖心女子学院事件 昭和29年3月 神戸地裁

退職時の未消化の有給休暇の買取りを学校に求める。

退職する者の有給休暇の買取りは違法ではないとして労働者が勝訴。

 

というような判断が示されています。

この判例を見てもわかりますように積極的に有給休暇の買取りを認めているというわけではなく、ただ違法ではないというようなものとしています。

労働者が退職時に買取り請求をして、それに応じても問題はないという程度で、必ず応じないといけないとまではいえないということだと思います。

 

可能な限り有給休暇を取得させる

 

退職日まで可能な限り有給休暇を取得させ、残りは権利を放棄させるという方法です。

これも正当な方法です。

また、退職日を後ろにずらして、有給休暇をすべて使い切ってから退職してもらうという方法もあります。

 

その他の注意点

 

時季変更権は退職日を超えては行使できない

  • 労働者からの有給休暇請求に対して、会社はその時季を変更する権利があります。
  • しかし退職日を超えてまでの時季変更は認められません。

 

解雇を行う

  • まれに退職者の有給休暇の権利を消滅させるために、強引に解雇を行う方もいます。
  • しかしこの場合、解雇予告手当の請求も予測されますので、お勧めはしない方法です。

 

有給休暇請求とトラブル

  • 昨今では有給休暇でのトラブルも起こっています。
  • 退職時には労働者は有給取得や買取の請求が却下された場合、労働基準監督署等に駆け込むことがあります。
  • ですので、しっかりと話し合いを行い、有給休暇等について退職時には双方の意思確認を行いましょう。

 

有給休暇の買取りの給与や計算

 

有給休暇は通常では

 

  • 通常の給与(いつもと同等の日給など)
  • 平均賃金
  • 健康保険の標準報酬日額

 

とこの3つのどれかで支給することを決めているはずです。

就業規則等で規定することで決めるわけですが、退職時の買取りについてその計算や金額の定めというものはありません。

上記でも記載しましたがもともと買取りを想定した制度ではないというのがその趣旨となっていることがその理由です。

そのため買取りをするというときにはその会社が通常採用している有給の給与を支給しても良いですし、また労使で合意した金額で買取りするということもあります。

よく聞く相場としては通常の有給休暇の日の賃金の半額で買取しているというようなところはあるのかもしれません。

 

有給休暇の買取りパート

 

パートなどその他の派遣労働者も加えた労働者も上記と同様で

「労使で合意した金額で買取りしてもらう」

ということになるでしょう。

 

有給休暇の買取りと退職金

 

別に退職金規定に基礎を置いた制度を採用していることもあります。

基本的に有給休暇と退職金とはまったく別の制度であり、

 

  • 退職金は規定通りに支給する
  • それとは別に有給休暇の買取り金額も支給する

 

ということが必要となります。

まれにせこく考えて、退職金の金額内に有給休暇の買取り金額が含まれるとするところもあるかもしれませんが、就業規則に反しているので有給休暇の買取り分を請求されても仕方がありません。

退職金制度がない会社では、この有給の買取り金額を退職金代わりに行っても良いと思います。

ただし何度もいいますが、このような取り決めは労使での話し合い次第といえるでしょう。

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