最近は人出不足な業種などではしばしば求人に入社祝い金の記載があるものも多くなっています。

ケースによっては初任給と同程度の入社祝い金となっているようなケースもありますが、この入社祝い金もトラブルも増加傾向にあります。

今回は甘い入社祝い金で釣られないようにするためのポイントについて紹介したいと思います。

 

入社祝い金でよくあるトラブル

 

企業からすれば求人を出す費用、そしてさらに入社祝い金を支給するということで二重の負担となります。

もちろん労働契約書で締結した給与も支給していかないといけません。

資本主義ではフリーランチはないというのが当然ですが、この入社祝い金も企業が負担するわけではありません。

 

  • その企業の給与額がその分だけ低く設定されている
  • その企業の供給するサービス単価がその分だけ高く設定されている

 

など何かで負担を賄うようになっていますし、ケースによっては両方に負担させているようなこともあります。

入社祝い金でトラブルというのはよくあるといっても良く、パターンとしては

 

  • 入社後一定期間在職しないと入社祝い金が受給できないようになっている
  • 入社期間後の在職期間に応じて分割支給となっている
  • 遅刻、早退、欠勤などがあれば減額されたり、支給なしになることもある
  • 入社後の誓約書などで一定期間以内に退職すれば返還義務があるような仕組みになっている

 

などというのはよくあることです。

ひどいケースでは入社祝い金自体が存在しないこともあります。

 

入社祝い金の返還の誓約書は法的にどう?判例は?

 

入社祝い金の返還については判例としてはそう出てきているものは多くありません。

有名なものとしては平成15年の東京地裁のものがあります。

 

東京地方裁判所(平15・3・31判決)

会社は入社に当たって支度金(サイニングボーナス)を支給した。

本人は半年足らずで自己都合退職してし、会社は支度金の返還請求を行った。

裁判所は労働基準法第16条の「賠償予定の禁止」に違反すると判断。

 

この事件では支度金として支払われたのは200万とされています。

雇用開始から1年以内に、自発的に会社を退職したときは、これを全額返還するという決まりがあったようですが、半年での退職でこのすでに受け取った200万を返還しなければいけないのかが焦点となりました。

裁判所の判断としては

 

  • サイニングボーナスの給付及びその返還規定は、労務提供に先行して一定額の金員を交付して、自らの意思で退職させることなく1年間会社に拘束することを意図した経済的足留め策に他ならない
  • 労働者の帰責事由を要件とした雇用契約の解約を念頭に置いたもので、違約金又は損害賠償額の予定に相当する性質を有している

 

ということで公序良俗に反して違法と最終的な結論にしています。

 

入社祝い金と労働基準法第16条

 

ここでポイントの1つとなってくるのが労働基準法第16条です。

 

第16条(賠償予定の禁止)

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 

実費弁償は問題ないのですが、あらかじめ金額を決めたものを損害賠償させるという趣旨のルールを違法とする条文となります。

今回のように高額な入社祝い金を返還するために意に反して勤務継続しなければいけないという労働者の自由意思を奪う行為なために違法という判決となっているといえます。

 

入社祝い金の返還と違法性の判断基準

 

ただ上でも記載しましたが入社祝い金関連の判例はまだ揃っていないので違法性の判断基準は完全に確立しているとはとてもいいがたいと思います。

そのため入社祝い金の制度自体がすべて違法というようにはいえませんが、

 

  • 入社祝い金の金額が大きい
  • 入社祝い金が返還できないときに在籍しなければいけないとされる期間が長い

 

といったケースでは労働基準法第16条違反とされる可能性は高くなるといっても良いかと思います。

そもそも16条ではあらかじめ違約金を定めることが違法としているので、入社祝い金の返還自体がもともと違法的といっても良いでしょう。

祝い金を導入して返還させるときにはかなり慎重にしなければいけないといえると思います。

 

違法な入社祝い金の返還を求められたときの対処法とは?

 

実際に労働者サイドで今回のような入社祝い金の返還を求められたときにはどう対処すれば良いでしょうか?

 

  • 労働基準監督署へ相談する
  • 弁護士さんなど専門家に相談する

 

というのが一般的な方法といえます。

労働基準監督署についても管轄分野というものがあるのですが、今回は労働基準法第5条の強制労働にも抵触するようなケースもあるので調査や是正勧告に入らないともいえません。

あとは弁護士さんなどに相談して返還義務がなさそうに思えば、返還請求を受けても無視して退職するというような方法もあるかと思います。

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